Pulmonary Hypertension肺高血圧

Pulmonary Hypertension
順天堂大学医学部内科学教室 准教授 循環器内科学講座 准教授

順天堂大学医学部循環器内科学講座 准教授
順天堂医院循環器内科

小西 博応HAKUOH KONISHI

肺高血圧症の治療指針を確立し、医療経済にも貢献する研究をめざす

「肺高血圧症」とは心臓から肺に血液を送るための血管(肺動脈)の血圧が高くなる病気。発症のメカニズムが未解明の分野である。肺高血圧グループでは、平滑筋細胞増殖による肺血管リモデリングをいかに抑制するか、そして新たな診断指標となるバイオマーカーをどう見つけるかなどのテーマを柱に肺高血圧症の研究を進めている。

研究途上の疾患について探求することに意義を感じ、肺高血圧症の道へ

私が初期研修で経験を積んだ病院は、年齢や立場に関わらず、すべての医師が一緒に熱意を傾けて診療する、チーム医療の色が濃い環境でした。中でも特にチームプレイの重要性を強く感じる機会が多かった循環器内科に進みました。
循環器内科は、急性期から慢性期まですべての段階で治療に関わることができますが、そのぶん画像診断やカテーテルなど幅広い知識・技術が要求されます。外科的な要素がありながら内科的な要素もある点や、カテーテルによる検査・治療、動脈硬化などの疾患に興味を持って志す人が多いのではないかと思います。研修医時代は私もその一人でしたが、研究を進めるうちに特に興味を持ったのは「肺高血圧症」でした。
私が学生の頃、肺高血圧症といえば主に呼吸器内科で扱われる疾患でした。しかし、メカニズムから考えると、肺高血圧症の病態は循環器的とも言えます。私が大学に戻ったときはすでに肺高血圧症の治療薬が発売されていましたが、この分野はまだ研究途上のことが多いと感じて研究を開始しました。

肺高血圧症における肺血管リモデリングや新規バイオマーカーの研究が進む

私が肺高血圧症の中で主に取り組んでいるのは、肺血管リモデリングの研究です。肺高血圧症のメカニズムのうち、特に肺血管の平滑筋細胞の増殖をいかに抑えるかという点にフォーカスしています。
最近では、左心性心疾患に伴う肺高血圧症(2群)の肺リモデリングに対して薬がどう作用するかという研究も進行しており、ポジティブデータがそろってきました。これについては今後、論文化する方向で進めています。
また、肺高血圧症の有無を示す指標となる新規バイオマーカーの研究にも力を入れてきました。他大学の医師との共同研究により、動脈硬化で平滑筋細胞増殖に関与するとされていた物質が肺高血圧症でも関与することを証明することができ、治療によってマーカーが下がるというデータが得られています。

未解明のことに挑む難しさの中に大きなやりがいを感じる

1998年、血管弛緩因子である一酸化窒素(NO)の研究がノーベル医学・生理学賞を受賞してから、NOと肺高血圧症に関する研究が盛んになりました。しかし、初の治療薬が発売されたのが1999年、ED治療薬が肺高血圧症に転用されるようになったのも2008年と歴史が浅く、まだ解明されていないことが多い分野です。論文はさまざま発表されていますが、血管の平滑筋増殖を抑制する薬剤は、2020年現在、基本的には血管拡張薬しかありません。
すべての病気に言えることですが、未知の病気を解明していく難しさはありますが、だからこそやりがいがあると私は考えています。ただ、そうはいっても私たちが力を注いでいる研究はあくまでも断片的なもので、研究によってすべてが解決できるわけではありません。非常に難しいことですが、自分たちの研究が将来どんな役割を果たせるかを念頭に置いて研究に臨んでいます。

肺高血圧症の患者を治すだけでなく、医療経済にも貢献したい

肺高血圧症を診断する指標には心不全のマーカーとして知られるBNPなどがありますが、まだ確立されたマーカーがあるわけではありません。それを探す研究は今後も続けていくつもりです。
日本では、肺動脈性肺高血圧症(PAH)や慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)は難病指定を受ければ基本的に患者負担はほぼなくなり、医療制度の恩恵を受けることができます。ただし、薬剤が本当に2剤、3剤必要なのか、あるいは1剤でいいのか、そもそも本当に効いているのか、そこを明確にする必要があります。血管病変に対して薬剤の効果がどの程度あるのかという治療の指標を確立できれば、個々の患者の治療にとって、さらに医療経済面にとっても大きな意義があると考えています。
私たちの研究は肺血管の平滑筋細胞に主軸を置いてきましたが、肺高血圧症と慢性腎不全という切り口の研究も構想中であり、今後の方向性についてはディスカッションを重ねて模索している段階です。また、心不全における右心機能など、血管以外の分野についても研究の幅を広げたいと考えています。

肺高血圧症の診療・研究の両面で他科とのスムーズな連携が活きている

肺高血圧症は、基礎疾患がない特発性の場合もありますが、それと同程度に膠原病や結合組織病、門脈圧亢進などに伴う肺高血圧症もあります。そこで肺高血圧症の患者を早期に発見して治療介入するために重要なのが、消化器内科や膠原病内科など、他科との院内連携です。もちろん他院からの紹介もありますが、当院では他科からの紹介がかなり多いのが特徴です。幸いなことに当院は院内の風通しが良く、膠原病内科、呼吸器内科、循環器内科の3科がうまく連携して肺高血圧症の早期発見がしやすい環境が整っています。リスクの高い患者さんにとっても安心して受診できると思います。
研究に関して、呼吸器内科など他科の医師とコラボレーションする機会がよくあります。互いの強みを活かし合い、新たな知識や手法を得ることができるのは非常にありがたいことです。

研鑽を積むほどフィールドが広がり多岐に渡ってチャレンジできる

振り返ってみると、かつての循環器内科は今と違って苦労することが多かったように思います。ステントがなかった時代、心筋梗塞のカテーテル治療では血管を広げては閉じ、広げては閉じ…と難儀したものです。加えて、リハビリテーションも確立していなかったため退院までに時間がかかり、治療も未確立で、心不全に陥ることも少なくありませんでした。
それが今では急性期の治療がしっかり行われ、慢性期に関してもシステマティックに動けるようになっています。大変ではないと言ったら嘘になりますし、他科とはまた違った大変さはありますが、以前ほど、いつ何時でも呼ばれるような診療科ではなくなりつつあります。

何よりも循環器内科は、多岐に渡ってさまざまなことにチャレンジできる診療科です。呼吸器の疾患だと言われていた肺高血圧症も、今では循環器の医師による診療・研究が大きく進んでいます。循環器内科は、知識や技術、手技があるからこそ守備範囲を広げることができる、おもしろいフィールドではないでしょうか。慢性血栓塞栓性肺高血圧症へのカテーテル治療に関しては国内留学を経て技術を磨いた医師もいるなど、ここでは多くの学びが得られます。興味がある人はぜひ一緒に肺高血圧症グループを盛り上げてほしいと思います。

小西 博応

小西 博応HAKUOU KONISHI

1994年順天堂大学医学部卒業、2002年同大学博士課程修了。
2003~2006年Stanford大学Falk心臓血管研究所博士課程修了後研究員。
専門は、臨床循環器病学、肺高血圧、動脈硬化。

〒113-8431
東京都文京区本郷3-1-3

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