Cardiovascular Disease疾患・病態メカニズム

Cardiovascular Disease
順天堂大学 大学院医学系研究科 准教授

順天堂大学大学院医学研究科
順天堂医院循環器内科 医局長

岩田 洋HIROSHI IWATA

動脈硬化を起こさないために
医師として科学者として、サイエンスへの探究心を持ち続ける

地道な基礎研究を重ねて見つけ出した医療シーズを医療機関で実用化することを目的に行う「トランスレーショナル・リサーチ」。さまざまな種類の研究の中で岩田医師が特に力を入れている研究だ。動脈硬化のメカニズム解明において、岩田洋医師は、長年にわたり探究を積み重ね、臨床での医療技術実現に向かって努力を続けている。

実用化を目指し、トランスレーション・リサーチへの強い思い

私は順天堂大学卒業後、研修先として虎の門病院に進み、最初にトレーニングを受けたのが循環器内科でした。循環器内科では刻々と時間が過ぎていく中で患者の状況が大きく変わります。治療自体がダイナミックな印象が強く、非常に興味深いと感じました。

私が医師になった1998年当時から循環器領域の医療技術がめざましく進歩していたことも関心を高めた理由かもしれません。外科的手法を行わなくても、血管からアプローチすることでカテーテルの治療ができることに魅力を感じました。その当時のカテーテル治療とは、主に冠動脈の狭窄または閉塞に対するインターベンションでしたが、虎の門病院がその分野に力を入れていて、第一線の先生方への憧れを抱いたのをよく覚えています。

臨床研究以外の研究を本格的に始めたのは虎の門病院から2002年に東京大学の大学院に入学してからです。東京大学では、細胞やマウスを用いて、骨髄由来細胞と平滑筋細胞の分化の関係について検討し、それ引き続いて、2012年から2015年まで、アメリカのボストン、Brigham and Women’s Hospitalでの留学時代には、マクロファージの動脈硬化進行への関与についての基礎研究を行いました。また、虎の門病院、東京大学、Brigham Women’s Hospitalに在籍していた間も、患者さんの臨床データの後ろ向き解析、大規模前向き介入研究などを含む臨床研究に継続して携わってきました。

「研究」とは幅の広い言葉で、さまざまな種類があります。基礎研究と言われているのは、いわゆるマウスや細胞を用いて病態や治療のメカニズムを探究する研究で、それとは対照的に、介入研究であれ観察研究であれ、患者さんの臨床データを用いた臨床研究があります。私はこれまでに、基礎研究から臨床研究まで、様々な研究を行ってきました。その中で、自分がもっとも興味深いと感じたのは、基礎研究と臨床研究の境目、「トランスレーショナル・リサーチ」と言われる分野でした。基礎研究で得られた知見を、臨床の現場にどうやって持ち込むか、研究者が改名したコンセプトやメカニズムを、どのように応用して治療法として確立させられるか、に大きな関心を持っています。

動脈硬化と炎症の関係性に新たなメカニズムを発見

動脈硬化は大きなテーマの一つです。組織が理想的じゃない方向に改変されていくのが動脈硬化なのですが、それがどのようなメカニズムで起こり、その進行を止めるためにはどのような介入が必要かを最大のフォーカスとしています。
我々は悪玉コレステロール(LDL)が高いと炎症も並行して起きているということに着目し、炎症を中心としたメカニズムについての研究に力点を置いています。
老化・加齢とともに進行する動脈硬化(冠動脈疾患)、心房細動、大動脈弁狭窄症、この3つの別々の疾患を、心血管リモデリングの一つの形と捉え、その共通のメカニズム、あるいは疾患独自のメカニズムを探索しています。

その候補となるメカニズムとして、血管などの組織から、毒性のあるコレステロールを引き抜いて肝臓に戻す役割を担い、善玉コレステロールと呼ばれているHDLの機能が低下すると、組織リモデリングが進行し、心血管疾患が進行する可能性を考えて検討しています。その仮説が正しければ、HDLの機能が低下する理由を見出し、それを食い止める方法を見出すことができれば、老化とともに進行する心血管疾患を抑制できる、あるいは重症化を防げる可能性があります。

動脈硬化性疾患の進行を抑制する薬剤の代表的なものはスタチンと呼ばれているLDLコレステロール低下薬です。現在のところ、HDLの機能を改善することによって動脈硬化の進行を抑制する方法は見出されていません。さらに大動脈弁狭窄症や心房細動は、脳血管イベントや心不全のリスクを上昇させることは明らかですが、大動脈弁狭窄症や心房細動自体の進行を抑える治療、特に薬物治療は今のところありません。そこで、私たちのグループでは、動脈硬化性疾患・大動脈弁狭窄症・心房細動の進行を食い止めて、その発症自体を抑制するためのメカニズムを見出し、介入していくことを最終的なゴールとして目指しています。さらに、必ずしも薬剤によらない、食事や運動や睡眠のような日々の生活への介入によっても循環器疾患の進行を抑えられることは知られています。予防医学的なプローチとして、それらが実際に動脈硬化性疾患・大動脈弁狭窄症・心房細動の進行メカニズムを抑制しうるか、についても検討したいと考えています。

臨床に携わることで得られる大きなヒント

私は上記にあげたような研究を行っていますが、同時に2015年の順天堂大学循環器に所属して以来、集中治療室の責任者務めてきました。循環器臨床の現場で、特に重症の患者さんの診療に携わっていると、現場のニーズや臨床上の疑問などが実感できるため、そこから生まれるアイデアも多いのではないかと考えています。

医師として科学者として必要とされる客観的に評価する能力

順天堂の循環器は非常に歴史があって、長期間かけて蓄積した、カテーテル症例に関する臨床レジストリデータベースがあります。規模自体は単施設ですし、全体でも蓄積されているのは、およそ1万1000症例でそれよりも規模の大きなレジストリは他にも多くあります。しかし、代田浩之前教授の尽力で1984年から30年以上データを蓄積しているデータベースは世界でも他に例がなく、極めて稀少なデータベースであり、それを活用して研究ができる恵まれた環境にあります。そこに日本の老化に関連する研究では、わが国の第一人者である南野徹教授が昨年から加わったことで、非常に魅力的な研究環境が整ったと言えます。

病気になってしまった人を治す手段はかなり発達してきましたが、ならないようにするメカニズムはまだ解明されていないことが多いと考えています。また、いわゆるブロックバスターとして、これまでに明らかでなかったこと、つまり何らかの疾患メカニズムが突然見出され、コンピュータサイエンスの進化とともに、これまでとは異なり極めて短時間で治療法として確立していく、という例がいくつもあります。われわれがチャレンジしなければいけないことはまだまだ残されています。患者さんの治療に当たる医師、医療従事者は科学者であり、物事を様々な材料から客観的に評価する能力が必要とされます。臨床医としてのキャリアを積んでいく過程で、例えば大学院での研究期間が与えられたり、あるいはそうでなくても、基礎研究・トランスレーショナル研究を含むサイエンスに触れ、その思考方法やロジックに触れるのはきわめて大切だと思います。

自分もそうでしたが、循環器内科でカテーテルやアブレーションなど、ダイナミックな手技をメインの仕事としてやっていきたいと感じる人は多いと思います。ただ、それだけではなく、科学者としての一面のおもしろさや奥深さを感じる機会をできるだけ多く持ってもらえればと考えています。

岩田 洋

岩田 洋HIROSHI IWATA

1998年順天堂大学医学部、2006年東京大学大学院卒業。
専門は、虚血性心疾患、冠動脈インターベンション、血管生物学・動脈硬化

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