順天堂大学大学院医学研究科循環器内科学 准教授
順天堂大学医学部附属順天堂医院 睡眠・呼吸障害センター長
葛西 隆敏TAKATOSHI KASAI
睡眠時無呼吸について
循環器領域で問題となる睡眠呼吸障害(Sleep disordered breathing: SDB)として、上気道の閉塞によって起こる『閉塞性睡眠時無呼吸(Obstructive sleep apnea: OSA)』と、呼吸中枢の呼吸リズム調節の問題によって起こる『中枢性睡眠時無呼吸(Central sleep apnea: CSA)』が挙げられます。
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)について
一般的に広く認められている睡眠時無呼吸は閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)で、肥満はとても強力なリスクファクターですが、首が短い、下顎が小さい、舌や扁桃が大きいなども解剖学的に上気道が閉塞しやすくなるため肥満がなくても無呼吸を起こしやすいことが知られています。OSAは、日中の眠気や集中力の低下、交通事故などの原因となるだけでなく、胸腔内圧の陰圧化や交感神経活性の亢進、繰り返す一過性低酸素など様々な機序により心血管系に悪影響を及ぼし、高血圧、冠動脈疾患、不整脈、心不全といった循環器疾患の発症・進展の原因となることが知られています。
中枢性睡眠時無呼吸(CSA)について
中枢性睡眠時無呼吸(CSA)は、脳や脳幹部の異常、循環器疾患 (特に心不全)や腎臓病などで見られる特殊なSDBです(基礎疾患のない人にも見られることがありますが、その原因はよくわかっていません)。CSAの中で、無呼吸と過呼吸を周期的に繰り返すチェーン・ストークス呼吸を伴うCSA (Cheyne-Stokes respiration with central sleep apnea: CSR-CSA)は、肺うっ血、心拍出量低下、交感神経活性の亢進、化学受容体感受性亢進、体液貯留など様々な要因によって発症し、心不全の結果として生じる病態ととらえられています。一方で、心不全に合併したSDBを治療することで心不全の状態が改善することが報告されており、循環器内科においてもSDBの治療に積極的に取り組んでおります。
睡眠呼吸障害(SDB)の検査・診断について
上記のようにSDBと循環器疾患は非常に関連性が強く、循環器疾患を有する患者さんにSDBの存在を疑い、検査・診断を積極的に行うことが推奨されています。SDBの診断がついた患者さんにおいて、循環器疾患の治療に加えてSDBの治療を合わせて行うことは循環器疾患の増悪や進展予防において重要です。
当科では、このような循環器疾患に合併したSDBの検査・診断・治療に積極的に取り組んでおり、当院の睡眠・呼吸障害センターと連携して診療にあたっております。SDBの検査・治療法に関しての詳細は当院睡眠・呼吸障害センターのホームページをご参照ください。