臨床応用可能な老化細胞除去薬の同定に成功した結果がNature Agingに掲載されプレスリリースされました！

2024.05.29 学術活動

臨床応用可能な老化細胞除去薬の同定に成功した結果がNature Agingに掲載されプレスリリースされました！

「老化細胞」は、様々なストレスで引き起こされる細胞分裂しなくなった細胞で、通常は免疫などによって除去されるものの、加齢や肥満などの免疫力が下がってくると蓄積し慢性的な炎症状態を起こすことで、動脈硬化や心不全、認知症などの加齢疾患の発症に関与することがわかっています。

今回、当科の勝海　悟郎特任助教、南野　徹教授らの研究グループは、「老化細胞」を糖尿病治療薬の一つである「SGLT2阻害薬」を使って取り除くことに成功し、その作用機序を明らかにしました。その成果は科学雑誌「Nature Aging」に掲載され、５月29日にプレスリリースが行われました。

Nature Aging誌

SGLT2 inhibition eliminates senescent cells and alleviates pathological aging

https://www.nature.com/articles/s43587-024-00642-y

研究グループは加齢や肥満により「老化細胞」が蓄積したマウスに「SGLT2阻害薬」を投与することで、投与されたマウスは内臓脂肪の「老化細胞」が減少し、動脈硬化などが改善していることを見出しました。またそのメカニズムとして「SGLT2阻害薬」は、「老化細胞」のもつ免疫細胞の働きを抑制する「PD-L1」を低下させることで、免疫が活性化し「老化細胞」除去を促進させる事が明らかとなりました。

老化細胞除去薬は世界各国で研究、開発が進められているものの、候補となる薬は抗がん剤として使用されているものが多く、その副作用が懸念されていました。「SGLT2阻害薬」は、本来持つ自己免疫を活性化することで老化細胞除去を促進させる新しいタイプの老化細胞除去薬であり、すでに臨床で使用されていることから副作用の懸念も少ない治療薬となります。今後はアルツハイマー病を含めた様々な加齢関連疾患での検証や、ヒトへの臨床応用が期待されます。