心血管画像・イメージング(土肥チーム)

Cardiovascular Disease 心血管画像・イメージング

Cardiovascular Disease
順天堂大学医学部循環器内科学講座 准教授

順天堂大学医学部内科学教室・循環器内科学講座 准教授
順天堂医院 循環器内科 病棟医長

土肥 智貴TOMOTAKA DOHI

最先端の血管内イメージング技術により、病態の解明から治療戦略の構築に挑む

がんに次ぐ三大死因でもある虚血性心疾患と脳血管性疾患。中でも急性心筋梗塞は、突然死の可能性もある重篤な疾患である。その病因である動脈硬化を正しく診断し、進展予防することは日本の医療の大きな課題となっている。血管内の状態を視覚化する血管内イメージングの技術革新により、血管壁の動脈硬化性病変を詳細に映し出し、客観的に評価することも可能となった。
土肥智貴医師は、血管内イメージングで急性心筋梗塞の原因となる不安定プラークの機序を解明し発症を予測することにより、急性心筋梗塞の概念を含む急性冠症候群の予防や再発リスクの軽減を目指している。

医師としての責任の重さとそれを超える仕事としてのやりがい

医学生のときの授業や初期研修で、患者の命を救う治療や急性期の管理というのが、とてもダイナミックで魅力的に思えたのです。
急性期の治療は、医師の決断によって患者の予後が決まります。患者の命に関わることを決めるというのが、医師としての責任の重さとそれ以上に仕事としてたいへんやりがいを感じました。循環器疾患は命に関わるだけでなく突発的に起こります。それをなんとか解決できないかという強い思いもありました。
研修医時代に実際に急性心筋梗塞の治療に携わり、自分でカテーテルを挿入してみると、ますます循環器医療への関心が高まりました。大学院で血管内イメージングのおもしろさにハマり、興味がどんどん深まっていきました。

不安定プラークの形成機序とその特徴が分かれば100%近く再発を防げる

現在、研究は冠動脈プラークの不安定化の機序の解明やその有用な指標を探索することを行なっています。急性冠症候群は血管の内膜肥厚やコレステロールの侵入から形成された「粥腫プラーク」という組織が基礎にあります。動脈硬化自体は誰でも起きますが、そのすべてが心筋梗塞を起こすわけではありません。プラークが不安定だと破綻して血栓閉塞性病変となり、イベント、つまり心筋梗塞や不安定狭心症を起こします。それを事前に解明して予測することができれば不測の事態を防げます。とりわけ一度心筋梗塞になった患者さんに関して言えば、その不安定プラーク進展の原因やそのプラーク形態特徴を解明し、それに応じた予防によって再発を防ぐことができるのではないかと考えています。

血管内イメージングで早期診断が可能となれば再発が予防できる

私は、大学院時代から10年以上にわたり患者の予後や予測因子の解明をするためのコホート研究を行っています。冠動脈疾患を治療した患者の予後を検証し、再発した患者と再発していない患者特徴について発表してきました。また、血管内イメージングデータと患者背景を比較検討した論文なども発表してきました。これらの研究の鍵となるのが、「血管内イメージング」です。

血管内イメージングとは、血管の中にカテーテルを挿入し、超音波や赤外線等のさまざまなデバイスを使って冠動脈のプラークを映し出す手法です。これは日本人医師が得意とする手技の一つでもあります。私の研究では特に動脈硬化の不安定化に注目して、血管の壁を見てきました。血管内イメージングにはIVUS(血管内超音波検査)やOCT(光干渉断層法)が使われていることが多いのですが、2012年に留学した時にNIRS(生体透過性に優れた近赤外光を用いて脳酸素代謝や脳循環を非侵襲的に計測する近赤外分光法)という新しい血管内イメージングのモダリティを勉強しました。不安定プラークの早期診断ができれば、早い段階で適切な治療が行えます。それら冠動脈疾患治療後は再発を予防するために積極的にリスク管理が可能となります。心臓の健康をしっかりと維持するためには、その病変の治療だけで終わるのではなく、個別に予防し再発させないための長期の予防戦略が必要なのです。

最新の血管内イメージングのデバイスと
蓄積したデータで再発予測因子を探索

これからは、C TやM R Iのような非侵襲的なイメージングがより増えてくるとは思いますが、まだ血管内イメージングにおけるプラーク研究には追いついていません。

当院には複数の血管内イメージングのデバイスがあり、他のチームと連携しながら、長期間にわたってさまざまな患者さんのデータを蓄積してきました。1回でも当院でカテーテル治療を受けた患者さんが将来どのぐらいの確率で再発するか、イメージングによりリスクを可視化、層別化(グループ分け)し、リスクに合わせた予防医療を確実に行いたいと考えております。
現在、当院のデータベースにおいて、特に着目しているのは再発形式です。

例えば、心不全で発症する人とステントの再狭窄で再発する人は明らかに患者の層が違います。これらの再発形式を早期に判断できれば、冠動脈疾患マネージメントだけでなく、心臓疾患全体の再発予防が可能だとも思います。さらには、患者の背景因子だけではなく、プラーク自体の不安定性やその発生部位などでリスク層別化ができればと考えています。 例えば、急性冠症候群(ACS)発症の患者さんでは、ほとんどの方が非責任病変を有し、その冠動脈ツリーに容量豊富なプラークが平均3〜4個あります。そのプラークが安定なのか不安定な危ないプラークなのかを調べておくことが重要であり、それを基に患者さんの予防戦略やリスク管理治療目標値を検討することも大切です。

心臓のポンプ機能は冠動脈血流に大いに影響しています。高齢化社会における心不全パンデミックが危険視されているなかで、冠動脈マネージメント、冠動脈疾患再発予防は心不全予防の観点からも喫緊の課題であることは間違いありません。

実際、急性冠症候群で100人治療したら、その後10%近くの患者が再発または何らかの冠動脈のイベントを起こします。また、大きな心筋梗塞を起こすと10年後は心不全になる確率が高くなります。冠動脈イベント再発をゼロにしておけば、狭心症フリーでQ O Lを保つだけでなく、心機能を維持して心不全発症を阻止することができるかもしれません。

当院ではカテーテルで治療をしたら終わりではなく、予防を含めて患者の心臓の健康を守るということを常に心掛けて診療や研究にあたっています。

アジア人データを集約して発信、診断や治療を確立するフェーズに

不安定プラークの血管内イメージングは欧米が先行していますが、まだまだ発展途上でわからないことが多い分野です。けれども撮像のテクニックつまり綺麗な画像を撮ることやP C I(経皮的冠動脈インターベンション)の手技のレベルに関しては世界でも日本人がダントツに高いと言われています。

各国でデータを集めていますが、人種によっても発症頻度、その地域に根付いた文化によっても必要な検査や治療が違います。欧米のデータを参考にしながら、日本人やアジア人向けの診断や治療を確立する必要があります。当院のデータベースから日本人独自のデータを集約して発信する、そんなフェーズにきています。

大きな期待がかかった血管イメージングで
病態の解明から治療戦略の構築まで

目の前の患者が「胸が痛い」と訴えると、なんとかしてあげたいという気持ちが湧き上がります。心筋梗塞を発症した患者さんの狭窄病変の治療をしたら、「先生、楽になりました!」と言われると、医者冥利につきます。それと同時に、どうしてこんなことが起きたのか、今後起きないようにできないかという強い思いが研究への熱意に変わります。

カテーテルインターベンションはドラスティックに患者さんの症状を回復させることができます。ただ不安定プラークの特徴把握そしてそれを基にした治療戦略構築についてはまだまだこれからの分野です。我々の先輩たちが時間をかけて築き上げた貴重なデータベースと、自分の得意なイメージングデータを組み合わせることでの治療戦略アプローチを早期に構築し、当院で冠動脈疾患を治療したら、2度と再発させないようにする、「冠動脈疾患ゼロイベント」を目指しています。また、優秀な後輩たちも育ってきているので、欧米のデータを参考にしながら、日本人やアジア人独自のデータや研究成果を彼らと共に世界にどんどん発信していきたいと考えています。

冠動脈プラークを視覚的に見ることができる血管内イメージングの研究は画期的であり、非常におもしろい分野です。病態の解明から治療戦略の構築に向けて日々頑張っていますので、心臓や血管もしくは心筋梗塞、急性冠症候群に興味ある人たちにはぜひ一緒に研究に参加してもらいたいです。

土肥 智貴

土肥 智貴TOMOTAKA DOHI

2001年順天堂大学医学部卒業、虎の門病院での内科研修を経て、2011年順天堂大学大学院医学研究科博士課程修了。2012年から2014年米国コロンビア大学へ留学。
専門は、冠動脈疾患、臨床循環器病学、心血管イメージング。

〒113-8431
東京都文京区本郷3-1-3

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